書籍の棚から

つり人社書籍編集長Oがお送りする折々のおすすめ単行本情報。 内容はもちろん、本のオビや自社広告には書けなかったこと、 制作現場のコボレ話などを交えて紹介していきます。新刊だけが本じゃない! ときどきの息抜きコラム「今週のちょっと寄り道」もどうぞ。

ベールアームは世界を回る(國吉昌秀)

440

スピニングリール版「大河ドラマ」

現代スピニングリールのルーツ、「イリングワース」。それは20世紀初頭のイギリス、ヨークシャー地方で誕生した。その後、スピニングリールは本国イギリス、フランス、スウェーデン、イタリア、ドイツ、スイスと欧州全体で発展を遂げていく。第2次世界大戦後は、アメリカを舞台に大市場競争が繰り広げられた。その「波」は、戦後の復興期を迎えた日本にも届き…。

私たち釣り人が何気なく使っているスピニングリール。その秘められた過去を、著者が世界を舞台に語り尽くします。膨大なコレクションから登場するさまざまなリールたち、やがて世界市場を席巻する日本の初期製品など、眺めているだけでも楽しくなる1冊。


 ■今週のピカイチ度 ★★★
 ■一家に1冊、永久保存版度 
 ■編集者の「マジで魂、詰まってます」度 ★★★

A5判192ページ全カラー
定価 2,100円(税込)

※情報はほぼ週イチ更新です。★=3つが最高

〜制作の舞台裏〜

思いのたけをタイトルに込めました

 書名を見て、「イマイチ意味わかんない」と思った方もいらっしゃるかもしれません。でも、これには深い深い意味があるんです、聞いてください…!

 この本の名前を思いついた時、体にイナズマが走りました。編集者にとって本のタイトルは「命」。これが企画段階であっさり決まることもあれば、中のデザインが大方出来ているのにまだ悩んでいる、というケースもあってさまざまです。この本では後者でした。

 当初、浮かんできたのは月並みな言葉ばかり。

「スピニングリール物語」
「スピニングリール大図鑑」
「スピニングリール大全」
「スピニングリール・パーフェクトBook」
…etc.

 ダメだ、どれも言葉に力がない、これではこの素晴らしい本の中身が全然伝わらない。

 そんな時、本に載せる写真を撮るためにカメラマンさんと連れ立って著者の國吉さんを訪ねました。博多出張、1泊2日でリール約350台撮影(!)とんでもない強行軍です。仕事でソウルに赴任されていた著者の國吉さんはこの日のために数日前に帰国され、少しでも撮影がスムーズにいくようにと、撮影順にリールをテーブルの上に並べて待機してくださっていました。大きなテーブルはリールとケースで埋まり、置ききれなかったものが下にもズラリ。壮観です。

 撮影中、次から次へとリールが手渡されていきます。美しく、金属なのに「温かみ」「柔らかさ」を感じる独特の質感と心地よい重さの初期のリール。

 世界的に流行したミッチェルのモデルの数々。
 いわずと知れたアブ。
 名前も知らない欧州のリール。
 そして、今の高精度からは想像もつかない日本の初期のリール。

 それらはまさにスピニングリールがこの世に生まれ、やがて世界を巡って発展していく激動の歴史そのものでした。僕は、掌(てのひら)にリールを受け止め続けました。ハードな撮影でしたが、二度と体験できない希有な一時でした。

 この時の体験が本の名前を決める原動力になりました。掌で受け止めた思いのありったけを、この言葉に込めました。

「ベールアームは世界を回る」

 ベールという名のスピニングリールの歴史は、本当に世界を回ったのです。

 どうですか、本書を読みたくなってきませんか? 

 編集者生活20年弱の僕のキャリアの中でも一、二を争うこの傑作コピーを、たぶん、僕は死ぬまで忘れない(←ちょっと大げさか)。


●オマケ「ベールアームの「ベール」の意味を知っていますか?」
 「bail」=鍋、バケツなどの「つる」。これ、ご存知でしたか? 恥ずかしながら僕はこの本を作るまで知りませんでした。てっきりウエディングベール(veil)の方だと思っていたのです。だってホラ、「ベールを上げる」って言うじゃないですか…(恥)。

●オマケその2「著者の國吉さんについて」
 國吉昌秀さんは、リールコレクターであると同時に、もちろん大の釣り好き。特に海釣りが好きで、撮影時も前日に釣ったというブリの刺身をご馳走になりました。そんな國吉さんが最近ハマッているのは「リールもサオも使わないマダイのテンヤ釣り」だそうです。ケッサクなオチ、ですね(笑)。


結びのトリセツ (つり人社書籍編集部編)  川釣り編(ルアー・フライ・バス・コイ・フナetc.)  海釣り編(投・磯・堤防・沖・ルアーetc.)

441448
    

読者目線の超便利な「結び方本」

どんな釣りの仕掛けでも、必ずどこかに存在するのが「結び」。しかも各部に応じて異なる結びを用いる必要性もでてくる。最近は釣りそのものが細分化、専門化しているので、正しい知識がないと釣り場でたいへん困ったことにもなりかねません。

また、ビギナーの方の場合は、単に結びを紹介されても、それをどこに用いればよいのかわからなかったり、せっかく結びをマスターしても肝心の仕掛けがうろ覚えだったりすることも充分考えられます。

本書はこれらの点の疑問への答えがすべて用意されているのがミソ。具体的に言うと、

 1 各ターゲットの代表的な仕掛けを紹介。
 2 1の各部分に必要・適した結びを同時に明記。
 3 各結びの結び方をイラストでわかりやすく図解。


という3部構成になっているのでたいへん便利かつ実戦的。世に結びの本は数あれど、本書のような構成のものはあまり目にしません。大人気増刷につき、文句なしにおススメの1冊です!

(アユ・渓流ジャンルについては弊社別商品『
アユ釣り・渓流釣り 結び方図鑑』がございます)

 ■今週のイチ押し度 ★★★
 ■これさえあれば何とかなる度 ★★
 ■名手の結びはキレイだぞ度 ★★★

 結びのトリセツ 川釣り編(ルアー・フライ・バス・コイ・フナetc.)
 結びのトリセツ 海釣り編(投・磯・堤防・沖・ルアーetc.)
 各A5判並製110P
 定価 各1,260円(税込)

※情報はほぼ週イチ更新です。★=3つが最高

〜制作の舞台裏〜

2色の細引きを使って大奮闘!?

この本を作るのはホントに大変でした!

図解を間違えてはいけないので、近所の山屋さんで買ってきた色違いの細引きで工程やイラストの図解を一つ一つ確認。中には釣りイトクラスの細いものでないと結びがうまくいかないものもあって、色違いの少し太めの釣りイトで試してみたり。

できた本には自信があるのですが、制作中のアタマの中は……マジこんがらがってました(笑)。薄い本ですが、かなり「汗」かいてるんです。

また、本を作るにあたって、すでに発売されている結びの本をいろいろあたってみたのですが、意外な「盲点」があることに気づきました。

紹介文にも書きましたが、それは、読者の視点が抜けているということ。

どんなに結びがたくさん解説されていても、それらをどこに利用すればよいのかが案外書かれていない。イト同士? 同じイト同士でも細いもの向きや他素材との組み合わせではどうか? 枝バリは? イトと金属類では? さらに、これらがわかっても仕掛けそのものが分からないとせっかくの知識も宝の持ち腐れ状態。そんな「発見」をもとに、より読者の方に便利なものをという気持ちで作らせていただきました。

また、巻末にはそれぞれ結びの強度比較データなどを記してあります。そして、大切なことは、結びは「結び方」次第でその強度が変わってくる、ということ。ジャンルを問わず名手と呼ばれる方に共通するのは、仕掛けの結び目が小さくて、キレイに作られていること。

結びはすべての釣り仕掛けの基本です。ここに神経が行き届くようになれば、貴方の釣りのレベルは格段に上がっていることでしょう。

里川のフナ釣り(葛島一美 著)

439


待望の「フナに始まりフナに終わる」本格入門書、登場

誰でも気軽に楽しめるイメージがあるフナ釣り。しかし、その奥は実に深い。

フナ釣り入門書の新刊が絶えて久しい昨今、川小もの釣り好きを自認する著者が満を持して書き下ろしたのがこの一冊。小さな中通しの玉ウキを何個も使う「シ モリウキ仕掛け」、さらに棒状の「バットウキ」を併用する仕掛けなど、フナ釣りならではの独特の遊び(釣り)方が一からていねいに解説されています。

まえがきで著者は、「フナ釣りとは、フナという魚を通して四季折々の変化のダイナミズムを感じ取る遊びである、ともいえる」と記しています。ぜひとも本書をご活用いただき、フナ釣りの醍醐味を味わってみてください。里山の自然が、あなたを待っています。


 ■今週(今季)のイチ押し度 ★★
 ■シモリ玉の動きに思わず胸キュン度 ★★
 ■やっぱり「釣りはフナに始まりフナに終わる」度 ★★★

 里川のフナ釣り(葛島一美 著)
 B5変形判/120P
 定価 1,680円(税込)

※情報はほぼ週イチ更新です。★=3つが最高

〜制作の舞台裏〜

平成の「侘び・寂び」はフナ釣りにあり

 さっき、ふと思い立ってインターネットのアマゾンで「フナ釣り」「マブナ」で本を検索してみました。フナ=舟?で沖釣り関連の書もヒットする中、正真正 銘フナ釣りの本としては、なんと1983年に出版された『マブナづり入門』が最後。当然絶版で古書のみです。釣りといえば、ファンでなくとも「釣りはフナ に始まりフナに終わる」という諺を知っている人も多いのに、この現状はちょっとさみしい。

 世間では「里山の自然」「エコ」「生物の多様性」などといった言葉が湯水のように流通しているというのに、これはどうしたことでしょう。一つ考えられる のは、世間が言う「里山の自然」は、多くの人にとってはすでに特別なもの、鑑賞するものになってしまっているのでは?ということです。

 しかし、里山の自然とは、人が長い年月をかけて身の回りの自然と関わり続けてきた中で育まれてきた景色のはず。それは本来、関わるものであって眺めるも のではないのですね。だから、本当に里山の自然に触れたいのであれば、たとえばフナ釣りという手段で関わってみる、というのは大いに…「あると思います! (笑)」。

 著者の葛島さんは、その点では野山の自然を満喫する達人といっていいでしょう。東京の下町に住まわれ、自転車で行ける近郊釣り場ならペダルをスイスイ漕 いで釣り場へ(弊社月刊誌『つり人』に隔月連載・釣輪具雑魚団(ツーリングざつぎょだん)執筆中!)。毎年冬の寒さが緩む頃には、本人もフナのように春を 感じてウキウキし始めるのがはっきり分かります。単に本人が釣り好きなだけ、という話もありますが、そんな気持ちに人をさせてくれるフナ釣りって、なんて ステキでしょう。

 本を作る時には、僕から見た、そんな著者のワクワク感を帯の文字に記しました。

釣りザオ一本手にすれば はじめた日からもう楽しい

 先に記した最後のフナ釣りの本が出た1983年の頃といえばバブル初期。その後、世の中はきらびやかに大きく変化し、また釣具もさまざまな進化が見ら れ、細分化していきました。そんな中、素朴なフナ釣りは、またその釣り場も、少しずつ忘れられていったのかもしれません。

 そして今、時代は回帰していると僕は思っています。

 釣りも然り。

 きらびやかな道具に興奮するのではなく、目の前の自然にただ溶け込む釣り。

 それは、たとえば釣り人がしばらくの間忘れていたフナ釣りだったりするのではないでしょうか。

 季節の移ろいをサオを通して感じ取ること。 これぞ釣りの世界における侘び・寂びだと思いませんか。

僕たちの渓流フィールド(つり人社書籍編集部 編)

僕たちの渓流フィールド 青森・秋田・岩手 僕たちの渓流フィールド 埼玉・東京・山梨・神奈川・静岡 僕たちの渓流フィールド 長野・愛知・岐阜・福井・富山
僕たちの渓流フィールド 	栃木・群馬・新潟 僕たちの渓流フィールド 	山形・宮城・福島  


僕たちの渓流フィールド(つり人社書籍編集部 編)
青森・秋田・岩手
山形・宮城・福島
栃木・宮城・新潟
埼玉・東京・山梨・神奈川・静岡
長野・愛知・岐阜・福井・富山

「究極」の渓流ガイドブック
各釣り場に精通するフライフィッシャーたちが現地を取材し、写真を撮り、地図を書き、原稿作成した、超ていねいなガイドブック・シリーズ。カワイイ表紙にダマされてはいけない(?)、内容の濃さは、どのガイド本にも負けません!

コンセプトは、「初めて訪れた人でも安心して釣りを楽しめる」こと。遊漁券取扱所の具体的な場所から始まり、入渓点、参考駐車スペース、渓相、詳細なス ポット情報、周辺情報、参考釣り上がりタイムなど、絶対欲しくて・でも案外載っていない必須情報がびっしり詰まっています。もちろんシーズンやアクセス等 の基本情報はもちろん、周辺の温泉&食情報も極力掲載。フライフィッシャーはもちろん、エサ釣りやテンカラファンの方にも大変役立つ内容です。


■今週(今季)のイチ押し度 ★★★
■かわいいヒツジの皮を被ったオオカミ度 ★★★
■個人的にも重宝してます度 ★★

※情報はほぼ週イチ更新です。★=3つが最高


B5判並製/128ページ
定価 各1,680円(税込)

僕たちの渓流フィールド 青森・秋田・岩手
僕たちの渓流フィールド 山形・宮城・福島
僕たちの渓流フィールド 栃木・群馬・新潟
僕たちの渓流フィールド 埼玉・東京・山梨・神奈川・静岡
僕たちの渓流フィールド 長野・愛知・岐阜・福井・富山

〜制作の舞台裏〜

「自分が読者だったら…」目線で作った欲張り本

本当に役立つ、しかも手作り感のある渓流ガイドブックを作りたい。そんな思いつきから始まったこの企画。とにかく従来のガイド本というと、川全体が載っていて、地図とともに各区間の解説があって…というもの。文字にすると特に問題なさそうですが、けっこう困るのが、

1. 遊漁券はどこで買えるか。
2. 入渓点はどこ?
3. この橋からこの橋まで釣ったらどのくらい時間がかかるか(あるいはその距離)。


といった情報が案外載っていないことです。みなさんも、初めて訪れた川で遊漁券取扱がどこかわからず往生した経験はありませんか? 僕はけっこうあります。だから、作るならこの1〜3をクリアした本にしたいという思いがまずありました。

実は、制作側からいえば、1〜3の情報があまりないのには単純な理由があります。それは「手間」の問題。たとえばある川を取材するとして、一番簡単なのは 主要な橋から上下の写真だけを撮り、あとで原稿や地図を作成してまとめるというやり方。これだと1日でかなりのフィールドを取材することが可能です。読者 の方も、そのような視点でガイドブックを見ていただくと、上記の方法を採用している本が多いことに気がつかれることと思います。

でも、僕はもっと読者の側に立った本を作りたかった。券はどこで買えて、橋と橋の間の渓相はどうなっていて、釣り上がるとだいたいこのくらいの時間がか かって、季節ごとにこんなフライがいいですよ、そうそう近くにはこんな温泉や食堂があって…そんな自分でも買いたくなる本を読者の方にお届けしたかったの です。

そこで、各地のフライフィッシャーの方にお声をおかけして、本の趣旨をお話しするとともに、次のようなお願いをしました。


1. はじめて訪れる方のための親切なガイドブックを作りたいのです。いわゆる「穴場紹介」の本ではありません。
2. 普段よく行く川をご紹介ください。
3. 川の全体ではなく、半日または1日楽しめるコースをていねいに解説してください。
4. 手描きのフィールドマップをお願いします。


春にお願いをして、秋に原稿が届きはじめました。行きなれたフィールドということもあってか、みなさん本当に素晴らしい原稿ばかりで、手描きのマップも個 性にあふれ、そのままお載せしたいほど丁寧に描いてくださっていました(実際はその原稿を元に、プロのイラストレーターが描き起こしています)。ちなみに このマップ、本当にフィールドを熟知していないと描けるものではありません。試しに自分の好きな川でやってみてください。どれほどていねいに取材されてい るか実感できるはずです。

こうして出来上がったのが「僕たちの渓流フィールド」なのです。年に1冊作るのがやっとでしたので、細かい情報(遊漁料)などに変化はあるかもしれませ んが、今なお「超おススメ」のガイドブック・シリーズであることに変わりありません。実際、あるフライフィッシャーの方が…この方は一流のアユの友釣りマ ンでもあるのですが…本書を熟読してくださっていると聞いた時には、自分の仕事を認めてもらえたような気がして本当にうれしかったことを覚えています。
、この場をお借りして改めて心よりお礼申し上げます。みなさまの
弊社定期刊行物「FlyFisher」がなければこの本は実現不可能でした。本書にご協力いただいた取材者のみなさまにおかげでよい本を作らせていただくことができました。

記事検索
QRコード
QRコード
TagCloud
livedoor プロフィール

tsuribito_shoseki

  • ライブドアブログ