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待望の「フナに始まりフナに終わる」本格入門書、登場

誰でも気軽に楽しめるイメージがあるフナ釣り。しかし、その奥は実に深い。

フナ釣り入門書の新刊が絶えて久しい昨今、川小もの釣り好きを自認する著者が満を持して書き下ろしたのがこの一冊。小さな中通しの玉ウキを何個も使う「シ モリウキ仕掛け」、さらに棒状の「バットウキ」を併用する仕掛けなど、フナ釣りならではの独特の遊び(釣り)方が一からていねいに解説されています。

まえがきで著者は、「フナ釣りとは、フナという魚を通して四季折々の変化のダイナミズムを感じ取る遊びである、ともいえる」と記しています。ぜひとも本書をご活用いただき、フナ釣りの醍醐味を味わってみてください。里山の自然が、あなたを待っています。


 ■今週(今季)のイチ押し度 ★★
 ■シモリ玉の動きに思わず胸キュン度 ★★
 ■やっぱり「釣りはフナに始まりフナに終わる」度 ★★★

 里川のフナ釣り(葛島一美 著)
 B5変形判/120P
 定価 1,680円(税込)

※情報はほぼ週イチ更新です。★=3つが最高

〜制作の舞台裏〜

平成の「侘び・寂び」はフナ釣りにあり

 さっき、ふと思い立ってインターネットのアマゾンで「フナ釣り」「マブナ」で本を検索してみました。フナ=舟?で沖釣り関連の書もヒットする中、正真正 銘フナ釣りの本としては、なんと1983年に出版された『マブナづり入門』が最後。当然絶版で古書のみです。釣りといえば、ファンでなくとも「釣りはフナ に始まりフナに終わる」という諺を知っている人も多いのに、この現状はちょっとさみしい。

 世間では「里山の自然」「エコ」「生物の多様性」などといった言葉が湯水のように流通しているというのに、これはどうしたことでしょう。一つ考えられる のは、世間が言う「里山の自然」は、多くの人にとってはすでに特別なもの、鑑賞するものになってしまっているのでは?ということです。

 しかし、里山の自然とは、人が長い年月をかけて身の回りの自然と関わり続けてきた中で育まれてきた景色のはず。それは本来、関わるものであって眺めるも のではないのですね。だから、本当に里山の自然に触れたいのであれば、たとえばフナ釣りという手段で関わってみる、というのは大いに…「あると思います! (笑)」。

 著者の葛島さんは、その点では野山の自然を満喫する達人といっていいでしょう。東京の下町に住まわれ、自転車で行ける近郊釣り場ならペダルをスイスイ漕 いで釣り場へ(弊社月刊誌『つり人』に隔月連載・釣輪具雑魚団(ツーリングざつぎょだん)執筆中!)。毎年冬の寒さが緩む頃には、本人もフナのように春を 感じてウキウキし始めるのがはっきり分かります。単に本人が釣り好きなだけ、という話もありますが、そんな気持ちに人をさせてくれるフナ釣りって、なんて ステキでしょう。

 本を作る時には、僕から見た、そんな著者のワクワク感を帯の文字に記しました。

釣りザオ一本手にすれば はじめた日からもう楽しい

 先に記した最後のフナ釣りの本が出た1983年の頃といえばバブル初期。その後、世の中はきらびやかに大きく変化し、また釣具もさまざまな進化が見ら れ、細分化していきました。そんな中、素朴なフナ釣りは、またその釣り場も、少しずつ忘れられていったのかもしれません。

 そして今、時代は回帰していると僕は思っています。

 釣りも然り。

 きらびやかな道具に興奮するのではなく、目の前の自然にただ溶け込む釣り。

 それは、たとえば釣り人がしばらくの間忘れていたフナ釣りだったりするのではないでしょうか。

 季節の移ろいをサオを通して感じ取ること。 これぞ釣りの世界における侘び・寂びだと思いませんか。