幻のクニマス発見はマスコミにも大きなインパクトを
与えたようで、各新聞でも盛んに取り上げられています。
「駅前新聞」が習慣の僕は、たまたま今日は朝日を手にとって
そのことを知ったのですが、1面とは別に、39面の社会欄で
組まれた記事の一部には強い違和感を覚えました。

それは今回のクニマス発見の立役者となったさかなクンの
紹介記事の下段に組まれたクニマスの故郷秋田の話です。

ふるさとも「まさか」
秋田・田沢湖畔の人々

と題して組まれた文章では、田沢湖畔に代々暮らし、
クニマスの研究をされていたというお父上をもつ方の
驚きと喜びのコメントとともに、クニマスが田沢湖から
絶滅してしまった経緯とその後のことが記されていました。

それはいいんです。
問題は、その後だ。

違和感を覚えたのは、やはりクニマスを研究してきたという
杉山秀樹・秋田県立大学客員教授のコメント。
新聞から引用しますね。

「田沢湖のクニマスが絶滅したのは事実。いわば国内産
外来種だ」と受
け止める。「田沢湖ではもうすめない。貴重な
固有種を人間が絶滅させた間違いを二度としてはならない」

最初の2行で、僕の涙は引っ込みました。
この方はいったい、何を言っているんだろうか。

かつての国策で田沢湖にクニマスを棲めなくさせた、そんな
過ちをもう二度としてはならない、それはそのとおりです。
でも、「国内産外来種」って、なんだよこの愛のなさ…。
いったいこれが、かつて人の勝手で絶滅の淵に追いやられ、
それでも70年のときを超えて生命をつないできたクニマスに
かける言葉だろうか。

杉山秀樹さんはクニマスに関する自著もお持ちの方なのに、
どうしてこんなことをいわれるのだろうと思っていたら、
外来魚駆除にも熱心な方なのでした。

けれども、僕にはどうしても外来魚駆除と同じ文脈で
今回のクニマスに「国内産外来種」というレッテルを
貼ろうとするのは、理解ができない。

西湖のクニマスは、地元の漁師さんの間では
「クロマス」と呼ばれているそうです。
名前がついているということは、少なくとも彼らの間では
「クロマス」=幻の魚ではなかったわけで、
(たくさんは取れないと思いますが)
そういう意味ではクニマスの研究者と称される方々は、
僭越ながらみなさん今までいったい何をなさってきたのかと、
今回の記事を読んで思わずにはいられませんでした。

「国内産外来種」、だって。

いろんな方のいろんな思惑とは別に、
田沢湖のクニマスの子孫が西湖で生き延びていたことに、
僕は、心から感謝の気持ちを捧げたいと思う。
その気持ちに、どんなレッテルも貼ろうとは思わない。




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