先の天皇誕生日において天皇陛下が記者会見を行なわれた際、
西湖のクニマス発見のニュースにも触れられています。
すでに多くの方がご存知のことと思いますが、
以下、その部分を抜粋させていただきます。
天皇陛下のお気持ちのあふれた、素晴らしいお言葉に
僕は感動しました。
宮内庁記者会代表質問
今年1年は日本人2人のノーベル化学賞受賞など、晴れやかなニュースの一方、国内では高齢者の所在不明問題、対外的には尖閣諸島問題などがありました。この1年を振り返り、こうした社会問題や近隣諸国との友好・交流についてお考えをお聞かせ下さい。
天皇陛下のお言葉(クニマス発見に触れられた部分)
この生物多様性年も終わりに近い頃、日本の淡水魚が1種増えました。それは、最近新聞などでも報じられたクニマスのことです。クニマスは田沢湖にだけ生息していましたが、昭和の10年代、田沢湖の水を発電に利用するとき、水量を多くするため、酸性の強い川の水を田沢湖に流入させたため、絶滅してしまいました。ところがこのクニマスの卵がそれ以前に山梨県の西湖に移植されており、そこで繁殖して、今日まで生き延びていたことが今年に入り確認されたのです。本当に奇跡の魚(うお)と言ってもよいように思います。クニマスについては、私には12歳の時の思い出があります。この年に、私は、大島正満博士の著書「少年科学物語」の中に、田沢湖のクニマスは酸性の水の流入により、やがて絶滅するであろうということが書かれてあるのを読みました。そしてそのことは私の心に深く残るものでした。それから65年、クニマス生存の朗報に接したわけです。このクニマス発見に大きく貢献され、近くクニマスについての論文を発表される京都大中坊(徹次)教授の業績に深く敬意を表するとともに、このたびのクニマス発見に東京海洋大客員准教授さかなクンはじめ多くの人々が関わり、協力したことをうれしく思います。クニマスの今後については、これまで西湖漁業協同組合が西湖を管理して、クニマスが今日まで守られてきたことを考えると、現在の状況のままクニマスを見守り続けていくことが望ましいように思われます。その一方、クニマスが今後絶滅することがないよう危険分散を図ることは是非必要です。
(抜粋、ここまで)
「日本の淡水魚が1種増えました」
クニマスへの少年時代の思いを
天皇陛下がこの会見で披瀝なさったこと、
そして、そのお立場に思いを馳せて
もう一度この一文をかみしめてみると、
はなはだ僭越ではありますが、
そこにはクニマス発見の報に接した
陛下の大きな喜びと、慎み深いお気持ちが
込められているように感じられました。
以前は魚類そのものが生息していなかったといわれる西湖。
今、その西湖には、漁業協同組合という組織と人の手で
放流・管理されている魚たちが泳いでいます。
そのなかでクニマスがひっそりと生き延びていた。
しかも、今まで研究者たちにも発見されることなく。
天皇陛下が「奇跡の魚」と称えられたとおり、
運命的なものさえ感じられる気がします。
さて。
早いもので2010年ももうすぐ終わりを迎えようとしています。
今年もいろんなことがありました。
暗い気持ちにさせられるニュースもたくさんありましたが、
そんななかでクニマス発見のニュースは、
釣り人としても、現代に生きる一市民としても、
(ついでにいうと秋田県出身者としても)
本当にうれしい出来事でした。
うれしい、といえば、
小惑星探査機はやぶさ帰還のニュースも、
昨今は宇宙の闇よりも暗いんじゃないかと思えるこの世の中を、
明るく力強く照らし出してくれたような気がします。
関係者の方たちの挑戦記録的なTV番組を見て、
僕は、(本物の)科学者や技術者の方たちの、
どんな困難にも諦めようとしない精神にも感動しました。
その不屈の精神を支えているのは、
彼らの宇宙に懸ける情熱でありロマンだと、
僕は勝手に解釈しています。
愛やロマンが科学に微塵もなかったら、
誰が感動するものですか(笑)。
さて!
一年間このブログにお付き合いくださり、
本当にありがとうございました。
来年もどうぞよいお年を。
クニマス大発見の立役者、
さかなクンのお話も載っている好評の書、
『サバがマグロを産む日』
もぜひご一読ください!