書籍の棚から

つり人社書籍編集長Oがお送りする折々のおすすめ単行本情報。 内容はもちろん、本のオビや自社広告には書けなかったこと、 制作現場のコボレ話などを交えて紹介していきます。新刊だけが本じゃない! ときどきの息抜きコラム「今週のちょっと寄り道」もどうぞ。

2010年12月

天皇陛下のクニマスへの思い

先の天皇誕生日において天皇陛下が記者会見を行なわれた際、
西湖のクニマス発見のニュースにも触れられています。
すでに多くの方がご存知のことと思いますが、
以下、その部分を抜粋させていただきます。
天皇陛下のお気持ちのあふれた、素晴らしいお言葉に

僕は感動しました。

 

宮内庁記者会代表質問

今年1年は日本人2人のノーベル化学賞受賞など、晴れやかなニュースの一方、国内では高齢者の所在不明問題、対外的には尖閣諸島問題などがありました。この1年を振り返り、こうした社会問題や近隣諸国との友好・交流についてお考えをお聞かせ下さい。

 

天皇陛下のお言葉(クニマス発見に触れられた部分)

 この生物多様性年も終わりに近い頃、日本の淡水魚が1種増えました。それは、最近新聞などでも報じられたクニマスのことです。クニマスは田沢湖にだけ生息していましたが、昭和の10年代、田沢湖の水を発電に利用するとき、水量を多くするため、酸性の強い川の水を田沢湖に流入させたため、絶滅してしまいました。ところがこのクニマスの卵がそれ以前に山梨県の西湖に移植されており、そこで繁殖して、今日まで生き延びていたことが今年に入り確認されたのです。本当に奇跡の魚(うお)と言ってもよいように思います。クニマスについては、私には12歳の時の思い出があります。この年に、私は、大島正満博士の著書「少年科学物語」の中に、田沢湖のクニマスは酸性の水の流入により、やがて絶滅するであろうということが書かれてあるのを読みました。そしてそのことは私の心に深く残るものでした。それから65年、クニマス生存の朗報に接したわけです。このクニマス発見に大きく貢献され、近くクニマスについての論文を発表される京都大中坊(徹次)教授の業績に深く敬意を表するとともに、このたびのクニマス発見に東京海洋大客員准教授さかなクンはじめ多くの人々が関わり、協力したことをうれしく思います。クニマスの今後については、これまで西湖漁業協同組合が西湖を管理して、クニマスが今日まで守られてきたことを考えると、現在の状況のままクニマスを見守り続けていくことが望ましいように思われます。その一方、クニマスが今後絶滅することがないよう危険分散を図ることは是非必要です。

 

(抜粋、ここまで)

 

「日本の淡水魚が1種増えました」

クニマスへの少年時代の思いを
天皇陛下がこの会見で披瀝なさったこと、
そして、そのお立場に思いを馳せて
もう一度この一文をかみしめてみると、

はなはだ僭越ではありますが、

そこにはクニマス発見の報に接した
陛下の大きな喜びと、慎み深いお気持ちが
込められているように感じられました。

 

以前は魚類そのものが生息していなかったといわれる西湖。

今、その西湖には、漁業協同組合という組織と人の手で
放流・管理されている
魚たちが泳いでいます。


そのなかでクニマスがひっそりと生き延びていた。

しかも、今まで研究者たちにも発見されることなく。


天皇陛下が「奇跡の魚」と称えられたとおり、

運命的なものさえ感じられる気がします。

 

 

さて。

早いもので2010年ももうすぐ終わりを迎えようとしています。

 

今年もいろんなことがありました。

 

暗い気持ちにさせられるニュースもたくさんありましたが、

そんななかでクニマス発見のニュースは、

釣り人としても、現代に生きる一市民としても、

(ついでにいうと秋田県出身者としても)

本当にうれしい出来事でした。

 

うれしい、といえば、

小惑星探査機はやぶさ帰還のニュースも、

昨今は宇宙の闇よりも暗いんじゃないかと思えるこの世の中を、

明るく力強く照らし出してくれたような気がします。

関係者の方たちの挑戦記録的なTV番組を見て、

僕は、(本物の)科学者や技術者の方たちの、
どんな困難にも諦めようとしない精神にも感動しました。

その不屈の精神を支えているのは、
彼らの宇宙に懸ける情熱でありロマンだと、
僕は勝手に解釈しています。


愛やロマンが科学に微塵もなかったら、
誰が感動するものですか(笑)。

 さて!

 一年間このブログにお付き合いくださり、
本当にありがとうございました。

来年もどうぞよいお年を。



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クニマス大発見の立役者、
さかなクンのお話も載っている好評の書、
『サバがマグロを産む日』
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『ボート釣りがある日突然上手くなる』
丸山 剛 著
四六判並製144P
定価:998円(税込)

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著者の丸山剛さんは、弊社の『つり人』『渓流』などで
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ボート雑誌の『ボートクラブ』では、
連載「丸ちゃん&コタニンのカートッパー山あり谷あり」
で活躍するなど、ボート釣りのエキスパートでもあります。
その丸山さんが書き下ろした本書は、
手漕ぎボートを中心にカートップボートまで、
対象魚もシロギス、ハゼなどからマダイ、アオリイカ、
深場のオニカサゴなど、幅広い釣りものをカバー。
ボート釣りならではのノウハウも交え、
ありそうでなかった実にユニークかつ実用的な
内容に仕上がっています。
明日の釣果を伸ばすための一冊として、
ぜひおススメします!

今週のピカイチ度 ★★(春になれば★★★
手漕ぎボート釣りも奥が深い度 ★★★
ありそうでなかった本度 ★★
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お待たせしました!

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チームタナゴ『日本タナゴ釣り紀行』奮闘制作レポート(3)

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イラストレーターのIさん、Hさん、
そして、もちろん著者の葛島一美さん、熊谷正裕さん、
みなさんのおかげでこんなに素敵な本を作ることが
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来週月曜日の27日には発売開始ということで、
年末の愛読書にぜひ
「日本タナゴ釣り紀行」を加えてやってください。
当日には、
弊社HP上でもお買い求めいただけるように
なっているかと存じます。
よろしくお願いします!

さかなクン、世紀の大発見!幻のクニマスが西湖で生きていた!!(その2)

幻のクニマス発見はマスコミにも大きなインパクトを
与えたようで、各新聞でも盛んに取り上げられています。
「駅前新聞」が習慣の僕は、たまたま今日は朝日を手にとって
そのことを知ったのですが、1面とは別に、39面の社会欄で
組まれた記事の一部には強い違和感を覚えました。

それは今回のクニマス発見の立役者となったさかなクンの
紹介記事の下段に組まれたクニマスの故郷秋田の話です。

ふるさとも「まさか」
秋田・田沢湖畔の人々

と題して組まれた文章では、田沢湖畔に代々暮らし、
クニマスの研究をされていたというお父上をもつ方の
驚きと喜びのコメントとともに、クニマスが田沢湖から
絶滅してしまった経緯とその後のことが記されていました。

それはいいんです。
問題は、その後だ。

違和感を覚えたのは、やはりクニマスを研究してきたという
杉山秀樹・秋田県立大学客員教授のコメント。
新聞から引用しますね。

「田沢湖のクニマスが絶滅したのは事実。いわば国内産
外来種だ」と受
け止める。「田沢湖ではもうすめない。貴重な
固有種を人間が絶滅させた間違いを二度としてはならない」

最初の2行で、僕の涙は引っ込みました。
この方はいったい、何を言っているんだろうか。

かつての国策で田沢湖にクニマスを棲めなくさせた、そんな
過ちをもう二度としてはならない、それはそのとおりです。
でも、「国内産外来種」って、なんだよこの愛のなさ…。
いったいこれが、かつて人の勝手で絶滅の淵に追いやられ、
それでも70年のときを超えて生命をつないできたクニマスに
かける言葉だろうか。

杉山秀樹さんはクニマスに関する自著もお持ちの方なのに、
どうしてこんなことをいわれるのだろうと思っていたら、
外来魚駆除にも熱心な方なのでした。

けれども、僕にはどうしても外来魚駆除と同じ文脈で
今回のクニマスに「国内産外来種」というレッテルを
貼ろうとするのは、理解ができない。

西湖のクニマスは、地元の漁師さんの間では
「クロマス」と呼ばれているそうです。
名前がついているということは、少なくとも彼らの間では
「クロマス」=幻の魚ではなかったわけで、
(たくさんは取れないと思いますが)
そういう意味ではクニマスの研究者と称される方々は、
僭越ながらみなさん今までいったい何をなさってきたのかと、
今回の記事を読んで思わずにはいられませんでした。

「国内産外来種」、だって。

いろんな方のいろんな思惑とは別に、
田沢湖のクニマスの子孫が西湖で生き延びていたことに、
僕は、心から感謝の気持ちを捧げたいと思う。
その気持ちに、どんなレッテルも貼ろうとは思わない。




img-Z15102423-0001『サバがマグロを産む日』
クニマス大発見の立役者となったさかなクンほか、さまざまな魚大好き先生が登場する「魚の一般教養書」の決定版!

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